京成グループ再編~各社解説~

研究・解説記事

京成グループによるバス事業の再編が、バス愛好家を中心に注目を集めています。その概要は、2025年4月に京成バス本体以外の各社を地域ごとに統合し、2026年4月には京成バス本体の営業所も再編。これにより、京成バス東京、京成バス千葉ウエスト、京成バス千葉セントラル、京成バス千葉イーストの4社体制となる予定です。

また、直近の動きとして、2024年11月に京成電鉄バスホールディングスが設立され、経営管理の一本化が進んでいます。

しかし、千葉県在住者や京成グループのファン以外にとっては、同グループ内のバス会社が多すぎて把握しづらいと感じる方も少なくないでしょう。実際、筆者自身も特定の会社以外について詳しくない部分がありました。そこで、以下では京成グループの各バス会社の概要について解説します。

京成バス

総本山であり、東京都の西は葛西や新小岩、東は千葉市までを担当します。一部コミュニティバスの受託等で台東区まで入ります。京成バスの規模はグループ内でも最大で、現在約600台の車両を保有しています。また、関西方面への夜行バスも担当しており、幅広いエリアで見ることが出来る会社です。

車両は営業所ごとに異なり、乗客の多い幕張地区では連接バスが導入、路線バスはいすゞと日野が中心ですが松戸営業所では三菱ふそうが導入されています。

東京BRT

東京BRTは、東京都が臨海部の鉄道空白地帯を埋める目的で推進するBRT(バス高速輸送システム)事業の一環として設立されました。事業開始に際しては、連節バスの運用実績を持つ事業者を公募した結果、京成バスが協力事業者として選定されました。これを受け、京成バスがBRT事業に特化した子会社として東京BRTを設立し、運行を開始しました。

東京BRTの運行路線は、主に東京都心と臨海部を結ぶものが中心で、既存の鉄道ネットワークを補完する役割を担っています。専用レーンや交通信号の優先制御を活用することで、高い輸送効率と時間の正確性を目指しています。

東京BRTの車両には、燃料電池バスと連節バスが導入されており、先進的かつ環境負荷の低い輸送手段を採用しています。また、最近では、京成バス本体からのエルガハイブリッド車両の転属も進められており、車両ラインナップが多様化しています。

統合後→京成バス東京

京成タウンバス

京成タウンバスは、東京都内の葛飾区を主な営業エリアとする京成グループのバス会社です。2001年に京成バス奥戸営業所から分社化され、運行を開始しました。その運行路線は、京成バス本体を補完するような位置づけとなっており、金町営業所と江戸川営業所の中間エリアをカバーしています。地域の生活交通を支える路線が多く、住宅地や駅を結ぶ短距離路線を中心に展開しています。

京成タウンバスの車両は、いすゞを中心に構成されており、オートマチックトランスミッションを採用しているのが特徴です。車両の更新サイクルが比較的早く、新しい車両への置き換えが順次進められています。

統合後→京成バス千葉ウエスト

東京ベイシティ交通

浦安を営業エリアとする会社で、一部高速バスも担当しています。オリエンタルランドが35%株を所有しており、純粋な京成電鉄子会社ではありません。浦安市のコミュニティバス「おさんぽバス」の運行も行い、地域住民の足として活躍しています。

車両はいすゞ中心。客数も多いため長尺、ワイドドアや4枚折戸のラッシュ型で導入しています。
長尺車で多くのお客を乗せて浦安の街を爆走するのが特徴で、京成グループの中では最も走りがアツい会社でもあります。私のお気に入りはQ尺ワンステップでアリソンAT仕様のLV234です。

京成トランジットバス

京成トランジットバスは、市川市の湾岸エリアを主な営業エリアとする京成グループの一員です。同エリアでは、地域住民の日常的な移動を支える路線バスの運行に加え、高速バスやディズニーリゾートのシャトルバスも担当しています。特にシャトルバス事業は、オリエンタルランドが一部株式を保有している関係から、ディズニーリゾートの輸送において重要な役割を担っています。

車両は、路線バス用としていすゞが中心であり、オートマチックトランスミッションを採用しているのが特徴です。この方式はKL-規制時代から継続的に導入されてきました。また、高速バスや特定輸送用の車両には三菱ふそう製も使用されています。

松戸新京成バス

松戸新京成バスは、千葉県松戸市を中心とする京成グループのバス会社です。その名前の通り松戸市周辺を主な営業エリアとしており、紫色の塗装が特徴的です。近年では、新京成グループ共通のピンク色のカラーリングが新車両に導入され、徐々に更新が進んでいます。

元々は新京成電鉄直営でバス事業を行っていましたが、2003年に分社化され、松戸新京成バスとして独立しました。

車両はいすゞ車で統一されています。車両の更新サイクルが比較的早く、古い車両は船橋新京成バスなど他の新京成グループ内の会社へ転属される例も見られます。

統合後→京成バス千葉セントラル

船橋新京成バス

船橋新京成バスは、鎌ヶ谷市と習志野市を拠点とする京成グループのバス会社です。それぞれの営業所で異なる塗装が採用されており、鎌ヶ谷営業所は青と赤、習志野営業所はライトグリーンの塗装が特徴的です。近年では、新京成グループ共通のピンク色のカラーリングが新車両に導入されるようになり、更新が進んでいます。

もともとは新京成電鉄のバス事業として運営されていましたが、松戸新京成バスと同様に分社化され、現在の形態に至っています。分社化後、習志野新京成バス(現在の習志野営業所)と船橋バスを統合することで現在の運営体制が確立されました。

船橋新京成バスの車両は、京成グループの中では珍しく、日産ディーゼル(現UDトラックス)製の車両が導入されています。また、いすゞや三菱ふそうの車両も運行されており、多様なメーカーの車両が採用されています。

グループ共通のカラー

京成バスシステム

京成バスシステムは、京成バスの貸切部門を分離する目的で設立されました。設立後は貸切バス事業に加え、千葉県船橋市の海側エリアを中心とする路線バスの運行も担当しています。路線バス事業では、主に京成バス本体からの経年車両を使用して運行されており、貸切バス部門では多様な車両が揃えられています。

京成バスシステムの特徴の一つとして、運行中に「みんなの京成バス」というテーマソングが流れる点が挙げられます。この歌は「いつも笑顔の京成バス♪」というフレーズが印象的です。

ちばレインボーバス

ちばレインボーバスは、京成グループのバス事業者で、主に千葉県北総線沿線から津田沼駅、西船橋駅方面を結ぶ路線を運行しています。会社名の「レインボー」にちなんだ塗装が自社カラーですが、京成グループ内で移籍してきた車両については、元の塗装を維持したまま運用されることが多くあります。

営業エリアは北総線沿線が中心で、白井市や鎌ヶ谷市から主要駅へのアクセスを提供しています。

千葉海浜交通

千葉海浜交通は、1963年(昭和38年)に京成グループの一員として設立されました。当時、千葉市の沿岸部の開発が進み、特に稲毛や検見川地区で新興住宅地や商業施設が拡大していました。この地域の交通需要を支えるため、千葉市を拠点とするバス事業者として発足しました。一部の路線では千葉駅や海浜幕張駅など広域の移動にも対応しています。

千葉海浜交通の車両は日野製に限定されているのが特徴です。また、トルコンAT(トルクコンバータ式オートマチックトランスミッション)を積極的に採用しており、滑らかな加速や運転のしやすさが重視されています。

統合後→京成バス千葉イースト

千葉交通

千葉交通は、京成グループの一員でありながら、他のグループ会社と異なる成り立ちを持つバス事業者です。もともとは鉄道事業を中心に活動していた歴史を持ち、現在はバス輸送を基盤とした多角的な事業を展開しています。バス事業のほか、不動産事業も展開しており、駐車場の運営等を行っています。

千葉交通の営業エリアは、千葉県の成田市、銚子市、香取市、匝瑳市などが中心です。車両は、日野と三菱ふそう製が主流です。成田市内では新車の導入が中心であり、中古車の導入は他の事業者に比べて少ない傾向があります。

千葉中央バス

千葉中央バスのルーツは、1946年に設立された「東洋交通」に遡ります。この会社は、同じ千葉県内で活動している「東洋バス」とは異なる会社ですが、創業者が同一です。千葉市内から大網方面が主要な運行エリアとなっており、地域内輸送を担っています。また、小湊鐡道バスと共同運行する路線もあります。特筆すべき点として、千葉中央バスは深夜急行バスの運行を行っていることが挙げられます。

千葉中央バスの車両は、路線バスが主にいすゞ製である一方、高速バスには三菱ふそう製の車両が導入されています。

千葉内陸バス

千葉内陸バスは、新興住宅地の開発とともに設立されました。特に千葉市の内陸部(花見川区や緑区など)における交通需要の増加を受け、地域の住民の移動手段を確保するために、1970年代に設立されました。

千葉内陸バスの車両は、主にいすゞや日野製で、ハイブリッド車も導入されており、多くの車両はオートマチック車です。大型車両は長尺仕様で、多客路線に対応した車両選択となっています。

ちばフラワーバス

ちばフラワーバスは、千葉市を中心に成東や東金などの地域へ路線を展開しているバス事業者です。特に、千葉市から成東までの長距離路線が特徴となっており、広範囲な輸送を行っています。成り立ちは京成電鉄時代の成東営業所を分社化したことです。

車両は主に日野製が使用されていますが、京成バスから移籍したいすゞや三菱ふそうの車両も運行しています。また、近距離高速バス向けには、かつてトップドア仕様のブルーリボンⅡが導入されていたこともあります。

ちばグリーンバス

ちばグリーンバスは、佐倉営業所を分社化して設立されたバス事業者です。車両は主にいすゞ製が使用されていますが、後述の豪雨で多くの車両が水没した際、京成グループ内からの移籍車が応援車両として導入されました。

令和元年の台風21号による豪雨では、ちばグリーンバスも大きな被害を受け、多くの車両が水没しました。その結果、十数台が廃車となり、運行の見通しが立たないほどの影響を受けました。しかし、その後、応援車両として他社から移籍した車両を使用することで、復旧を果たしました

ちばシティバス

ちばシティバスは、京成バスの千葉市内の一部路線を引き継ぎ分社化された会社で、主に千葉市内で運行されています。一般路線は全線が千葉市内を走り、特に千葉市美浜区から千葉市中央区にかけて路線網を持っています。

車両はいすゞ、日野が中心で、高速バスには三菱ふそうも使用されています。グループ内からの移籍車も比較的多くなっています。

成田空港交通

成田空港交通は、成田空港内の輸送やターミナル間連絡バス、成田市内の一般路線バスを中心に運行しているバス事業者です。また、長距離高速バスとして、和歌山や仙台行きの便も運行しています。

車両はターミナル間連絡バスにはブルーリボンハイブリッド、一般路線には京成バスからの移籍車を使用しています。


いかがだったでしょうか。まずは、現在京成グループを構成する各社について解説しました。数が多くかなり複雑ですが、各社で車両のメーカー指定や特色、走っているエリアがお分かり頂けたかと思います。次回は統合に向けた流れ、構成図、考察などを記していこうと思います。ご覧いただきありがとうございました。

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